第六の言葉

2026年日本語版
アラビア語原文
農場を家来に授ける皇帝
アラビア語原文
戦火に荒れる農場を見る二人
アラビア語原文

己が命と財をアッラーに売り、そのしもべとなり、また御軍の兵士となることが、いかに利益ある商いであり、いかに尊き地位であるかを知りたければ、この譬えを聞け。

信託の証を差し出す若者と役人
夜の門をくぐり旅立つ若者

ある時、ひとりの王が、臣民のうち二人に、ひとりずつ一つの農園を預けた。その中には、工場も機械も馬も武器もすべて備わっていた。しかし時は嵐の戦乱のさなかであり、いかなるものも安定せず、やがて滅ぶか、かたちを変えて消えゆく定めにあった。

王は、その二人のために深き慈悲をもって、最も信頼する近侍を送り、きわめて慈悲に満ちた勅命を伝えた―「汝らの手にあるわが委託物を我に売れ。そうすれば、我がそれを守り、無駄に失わせぬ。戦いが終わった後には、より美しくして完全なかたちで返してやろう。しかも仮にその委託物が汝らの財産であるとしても、我はきわめて高価に買い取ってやる。さらにその工場や機械の道具を、我が名のもとに、我が工房で働かせよ。するとその代価も報酬も一から千へと倍増し、そのすべての利益を汝らに与えよう。加えて、汝らは無力にして貧しく、その大事業に必要な費用を整える力はない。すべての経費と物資は我が負担し、すべての収益と利益を汝らに授けよう。そして除隊の時まで、その委託物を手元に残しておくことを許そう。これぞ五重の利益のうちに利益である。」

「もし我に売らぬなら、すでに見てのとおり、誰ひとりとして手にあるものを守り通せぬ。いずれすべてが汝の手から離れ、他の者と同じく失われるであろう。そのうえ、それは無駄に消え、高価な対価を得ることもできぬ。また、精妙にして貴重な器具や量具は、王の御事業に用いられぬなら、まったく価値を失う。さらにその管理と維持の苦労が汝の上にのしかかり、委託に背いた罪の報いを受けることになる。これぞ五重の損失のうちに損失である。」

「しかも我に売るということは、我に仕え、我が名のもとに行動することである。卑しい捕虜や放浪者である代わりに、偉大なる王の直属の自由なる侍従となるのだ。」

この恩寵と勅命を聞いたのち、二人のうちの思慮ある者は言った。「かしこまりました、喜んでお売りいたします。しかも千の感謝を捧げます。」

薄暗い部屋で秤を手にする男

他方の男は傲慢で、魂はファラオのように我を張り、自己愛に溺れ、酒に酔い、まるでその農園に永遠に住むかのように振る舞い、この世の地震と動揺に無知であった。彼は言った。「いや、王など知るものか。私はこの財を売らぬ。私の気ままを乱すな。」

しばらくして、最初の男は人々が羨むほどの地位に昇り、王の恩寵に浴し、王宮において幸福に暮らした。だがもう一人は、誰もが憐れみながらも「自業自得だ」と言うほどの惨めな境遇に陥った。なぜなら、彼の過ちの報いとして、幸福と財産をともに失い、さらに罰と苦痛を受けるに至ったからである。

かくのごとく、欲に満ちた我が魂よ、この譬えの望遠鏡をもって真理の顔を見つめよ。あの王とは、永遠の初めより終わりなき御方、汝の主にして創造主である。そしてその農園、機械、道具、量りとは、汝の生命の領域の内にある所有物、すなわちその中の肉体と魂と心、さらにその内部にある目・舌・理性・想像力など、外的および内的の感覚のことにほかならぬ。あの尊き近侍とは、尊貴なる使徒であり、あの権威ある勅命とは、叡智に満ちたクルアーンである。かの御書は、この大いなる商いを次の御言葉にて告げている。

アラビア語原文
アラビア語原文

あの波立つ戦場とは、この嵐のごとき現世の表面であり、休むことなく回転し、崩れ、変化し続けている。すべての人の心にこの思いを投げかける、「我らの手にあるものはすべて去り、滅びて失われる。ならば、それを永遠のものに変え、存続させる方法はないのか」と。そのとき天よりクルアーンの声が響く、「然り、ある。それも五重の利益のうちに利益となる、麗しく安らかな方法がある」と。問われる、「それはいかに」。

祈る若者と、腕を組み拒む男
門前で栄誉を受ける若者

答えて曰く―「委ねられたものを、真の所有者に売ることである。」

雨の中うずくまる男を見る若者
門の外に立つ人々と、離れて佇む男

その取引には五つの利益が重なっている。

第一の利益―滅びゆく財が永遠のものと

なる。なぜなら、永遠にして自存する御方に捧げられ、その道に費やされた儚き命は、永遠に転じ、永続の実を結ぶからである。そのとき命の一分一秒は、種や核のように外見では朽ちて消えるが、永遠の世界において幸福の花を咲かせ、穂を実らせる。そして中間の世界にて、光輝ある慰めの風景となる。

第二の利益―その対価は楽園という無比

の報酬である。

第三の利益―身体の一肢、感覚の一つ一

つの価値が一から千へと高まる。たとえば理性は一つの器である。もしそれをアッラーに売らず、己の欲のために使えば、過去の悲しみと未来の恐怖をこの哀れな頭に背負わせる呪われた道具となる。ゆえに罪人は、多くの場合この理性の苦悩と悩みから逃れようとして、酒や娯楽に走るのである。だがもしそれを真の主に売り、その御名のもとに働かせるならば、理性は限りなき慈悲の宝庫と叡智の秘蔵庫を開く魔法の鍵となり、所有者を永遠の幸福へと備え導く主の案内者の地位にまで昇らせる。

また、目とは魂がこの世界を眺める窓である。もしそれをアッラーに売らず、己の欲に仕えさせるなら、移ろいゆく儚い美と光景を追い求め、欲望と快楽に仕える卑しき媒介者となる。だがもし視覚を全視の創造主に売り、その御名と御許しのもとに働かせるならば、目は偉大なる宇宙の書を読み解く読者となり、天地に展開する主の芸術の奇跡を観る証人となり、地上の慈悲の花園にて蜜を集める祝福された蜂のごとき地位に上る。さらに舌の味覚の力を叡智の創造主に売らず、己と腹のために働かせるならば、舌はただ胃の厩舎と工場の門番にすぎぬ卑しい存在に落ちる。だが、尊貴なる供給者にそれを売れば、味覚は神の慈悲の宝庫を監察する熟練の監督官となり、全能にして自存の御方の厨房を感謝の心で視察する高貴な職責に昇るのである。

嗚呼、理性よ、耳を澄ませよ。災厄を招く器具は何処にあるか、宇宙を開く鍵は何処にあるか。眼よ、よく見よ。凡俗の力は何処に在るか。神の書庫の優雅なる観察者は何処に在るか。舌よ、よく味わえ。台所の門番にして工場の番人の如き身分は何処に在るか。慈悲の秘蔵を監理する監督は何処に在るか。かつ同様の諸器官と肢体を比べれば、まことに信仰者は楽園に相応しく、不信者は地獄に相応しき性質を帯びることを悟るであろう。彼らの各々がその如く価値を得る所以は明らかである。すなわち、信仰者は己が信仰により創造主の委託を、その御名と御許の範囲において用いるに対し、不信者は背信して己が命じるところの欲望のために用いるゆえである。

花咲く果樹園に立つ若者
土の中で朽ちる種と、そこから育つ花と実の木

第四の利益―人は弱く、災厄多く、貧し

く、必要甚だしきものなれば、もし全能にして尊厳なる方(創造主)に寄り頼み、信を置き委ねざれば、良心は恒に苦悩のうちにあり、徒らなる苦労と悲嘆と後悔が彼を圧する。やがて或は酔い、或は獣と化すであろう。

作業場で機械を操る若者

第五の利益―諸器官の礼拝と讃美と高き

真鍮の鍵で英知と慈悲の宝庫を開く男

報酬は、汝が最も窮するときに、楽園の果実として与えらるべしと、至高の神秘の嗜好者、観念の達人、深き専業者と見証のある者たちが一致して告げる。もし汝この五重の利益なる大いなる商いをなさずば、これらの恩恵を失うのみならず、五重の損害のうちに堕ちるであろう。

第一の損害―汝の最も愛する財、子、崇

桜咲く庭で蜂を見つめる若者

める己が欲、陶酔する若さと生は失われ、汝の手を離れ去る。だが汝の罪と悔いは汝に残り、汝の首に重くのしかかる。

食卓で果実を味わう若者

第二の損害―委託に対する背信の責罰を

受くる。すなわち最も尊き器具を、最も卑しき事に耗し己を虐げたためである。

第三の損害―すべての貴重なる人の器具

を、動物以下の位に貶め、神の叡智に対して誣告と暴虐を働いたのである。

雨の中畑に膝をつく若者

第四の損害―無力と貧困とともに、その

大いなる生の荷を弱き背に負わせ、滅びと別離のむちの下に常に嘆き叫ぶであろう。

続けて第五の損害―汝はまた、諸器官の真の価値と尊厳を取り去られ、享楽と堕落の奴隷として無益なる欲に使役されるがゆえに、永久の幸福を逃し、最終的には惨めなる果報を受くるであろう。さて、汝は選ぶがよい。導きと成功を最も慈悲深き方に祈願せよ。

第五の損害―永遠の生命の基盤と来世の

幸福の備えを得るために与えられた理性・心・眼・舌といった慈悲の贈り物を、地獄の門を汝に開く醜悪な姿に変えてしまうことである。さて、今や「売る」とはどれほど重いことなのかを見よう。多くの人がそれを避けるほど困難なのか。否、断じてそうではない。決して重荷ではない。なぜなら、合法の範囲(ハラールの領域)は広く、享楽に十分であり、禁忌に踏み込む必要はまったくないからである。アッラーの定めた義務も軽く少ない。

そしてアッラーの僕にして兵となることは、言葉では尽くせぬほど甘美で、崇高なる名誉である。務めるとは、ただ兵士のようにアッラーの御名のもとで行い、御名をもって始め、アッラーの御為に与え、アッラーの御為に受け取り、御法と御許しの範囲で行動して安らぐことである。もし過ちを犯したなら、悔い改めて赦しを請うべきである。「おお我が主よ、我らの過ちを赦し、我らを御身の僕として受け入れたまえ。御委託をお取りになるその時まで、我らを委託に忠実なる者としたまえ。アーミーン。」―かく祈り、御方にひたすら懇願すべきである。

出典:『小箴言』、ベディーウッザマン・サイード・ヌルスィー著、ナオキ・ヤマモト訳、レイハン出版、2026年1月。ISBN 978-83-63796-27-3。

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